2011年とかの本。久々に再読した。消費の形の変遷と若者の意識の変わり方をこれでもかと言う位にわかりやすく解説している。どちらかと言うと若者相手にビジネスとか商売したい人達向けに書かれた本なので少し癖はあるけれどめちゃくちゃ面白い。この癖と言うのがもったいない。
SQ “かかわり”の知能指数
posted with amazlet at 13.02.03
第1章で、大手広告代理店と行った自分の調査を紹介。主に若者の意識と幸福(と感じている)度の相関を示す。2章以降でなぜそのような意識になったかを歴史的経緯から解説している。戦後からバブルを経て現在に至るまで、モノはどのように売れてどのように人々はそれを消費して来たか、その消費の規模感を表すSQという指標がキーワードになるのである。
また、思考を活性化するような刺激的なトピックも並ぶ。お金と幸せの関係、ショッピングモールと百貨店、スポーツカーとエコカー、シェアハウスなど。これからの若い人達が集まるのは自分の部屋でなく、電源の周りである、という指摘も刺激的。さらにこれらの提案をしておいて、これらに対して立場的には懐疑的であるという著者のひねくれっぷりも健在。これがチャーリー節の醍醐味でもある。
ただ問題なのは全体を通してまず参考文献が紹介されていないこと。どこまでが著者の解釈でどこまでが業界の常識なのかがよくわからない。それから社会学にもいろんな立場があろうことが創造されるが、著者が社会学の考え方の代表のような書き方になってしまっていることももったいない。さらには読み進めていくうちに歴史的変遷からSQの指数を高めることがまるで人間の理想像のような語り方になっている。戦後からの価値観もバブル期に若者だった人達の価値観も社会貢献意識の高い若者の価値観もあるのが現代の混乱の源泉でもありクリエイティビティの源泉でもあるでしょうに。
若い人達が顔の見えない100万人に貢献するより顔のみえる1万人に貢献する仕事をしたいと言う意識があるというのも面白い指摘だし、身の回りにも大手企業や公官庁をやめてNPOやフリーランスになった友人も多い。彼らは昨今のノマド賞賛のようにそれがかっこいいという意識で仕事を離れた訳ではなく、社会貢献(と言う顔の見える人達への貢献)をやってみたいという意識があったからこそ参入していったし、成功している友人達は自分は皆孤独だと言いながらも、ロールモデルももし失敗したときのセーフティネットもしっかりと構築している。うらやましくも頼もしい。
関わり方の変遷を鮮やかに描き出し数値としても示したことは本当にすごいなと思う一方で、それを単純化して巻末にチェックシートとして提示してしまったせいで全て台無しにしてしまった感もある。身近な人達に試してみたけど占いレベルの結果しか得られず、「あ、幸せなんですね」としかコメントしようがない始末。話題にはなるので使うといいかも。
ちなみに電子書籍版だと半額なのね。