素朴であることが美しい権力()への意思-メディア評-映画「69 sixty nine」

 伏線のあざとさと、ストーリーの明快さと、コメディ展開のテンポの良さとの小気味よさは秀逸。同じような問題意識を持ってる人は見ても損しないしオチはひどくてちょっと失笑なのだけれど、なかなか腹7分を満たしてくれる感じの作品。
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 個人的な趣味として最近反抗期研究という言うのを進めている。といっても論文漁ると言うよりは心理学や文学の書籍をつまみ食いして若者の反抗がどう語られて来たかを少し調べてるだけなのであるが、その流れでいわゆる全共闘だの学生運動だのをちょろっと勉強したいと思い鑑賞に至った。何かオススメあれば教えてほしい。
 GOやピンポンや少年メリケンサック、ドラマ木更津キャッツアイや池袋ウェストゲートパークでおなじみの宮藤官九郎が脚本を手がけ、主演は妻夫木聡。少年特有のモテたいがためのはったりが、周りを巻き込んで行くストーリーで、めちゃくちゃ面白かった。舞台は1969年、学生運動と因縁の深い長崎県立佐世保北中学校・高等学校。最近坂道のアポロンでも舞台になったのでおなじみ。
 中高生から見えてる不条理は、いろんな描き方があり、いろんな分類があって、システム的なもの、属人的なもの、関係的なものなどいろんな不満の認識があるはずで、この作品はそんなものをせせら笑う。笑いながらも本気なら応援するよ、とカメラとBGMだけを提供するような、そんなニヒリズムを孕んでる。発見したのは、全共闘だの学生運動だのにとって、歴史的な文脈をふまえているかなんて、そのムーブメントの参加者たちの大半に取ってはどうでもいいと言うこと。大義はかならず個人の利益と合致するからこそ使われる。妻夫木聡の、情熱的で、下品で、早とちりで澄ましたキャラクターの魅力がよく描かれていた。