教員志望者を増やすための有効な施策アイデア

4月の上旬、文部科学省がようやく教員不足の実態を全国調査することを発表した。

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公立小学校でいわゆる「35人学級化」を実現する改正法が成立したことを踏まえ、文部科学省は必要な教員の数の確保に向けて、5月全国の公立の小学校と中学校を対象に、教員が不足している実態を調査することになりました。

公立小学校の1クラス当たりの定員を今年度から5年をかけてすべての学年で35人以下に引き下げる改正義務教育標準法が今の国会で成立し、これに基づき、いわゆる「35人学級化」を実現するためには、新たに1万3000人余りの教職員が必要になると推計されています。

これを踏まえ、文部科学省は「35人学級化」に必要な教員の数の確保に向けて、5月全国の公立の小学校と中学校を対象に、教員が不足している実態を調査することになりました。

学校現場では、学級担任が不足し、教頭などが代わりに対応するケースもあるということで、調査では教員の不足数やそのうちの学級担任や教科担任の数不足している要因などについて尋ね、結果はできるだけ速やかに公表したいとしています。

 

 逆に今までやってなかったんだ、というところが手応え。教員免許更新のタイミングで失効したり、更新は教員として働いている実績が必要(雇用責任者の印が必要)なため、教える経験・技術・実力があるのに失効していく教員も少なくないと聞いている。

 

今までは教員免許保持者の総計と、将来的に子供が減ることを見越して正規雇用を増やしてこなかった。このブログでも何度か、(経験則ではあるが)教員採用試験の倍率が2を切ると競争による適性フィルタリングが効果を発揮しないんじゃね?という問題を指摘をしてきたし、現実着実に減っている。

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令和2年度(令和元年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント

出典:令和2年度(令和元年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について:文部科学省

団塊ジュニア世代の集団退職もあり、採用者数が増えているのもあり、採用倍率が2を切っている都道府県もやはり存在する。

また、同じくらいのタイミングで、情報科教員の複数校指導の手引きなども公開され、教科・免許ごとによる教員不足も推し測ることができる。

www.kyobun.co.jp

高校の新学習指導要領で情報科の内容が高度化したことを受け、文科省は4月15日、情報科の免許を持った教員による複数校指導の手引きを公開した。地域によっては、専門性や指導力のある教員が不足している課題に対応するためで、一人の教員が複数の高校を兼務する場合や遠隔授業を活用した場合の方法を、教育委員会や管理職、担当教員向けにまとめた。

 

遠隔授業補助教員おけば遠隔授業していいよ、とか対面授業して、っていう文科大臣の言葉とは反対だなという印象のことがいろいろ書いてある。情報科の人材育成の話をするのであれば、そもそも情報について専門知識があり、その上指導スキルもある人材であれば学校でなく開発現場に行った方が当然給料や待遇が良い。プログラミング専門の塾なども増えており、情報科の教員育成を充実させればさせるほど、人材が外に流出していくというパラドクスを抱えている。

 

そして極め付けはSNSで教職の素晴らしさを発信してほしいという #教師のバトン プロジェクト。教員や元教員と思われる方々の、労働環境に関する悲鳴が多数投稿され、教員志望者の減少に拍車をかけるのではないかと話題になった。詳細はこちらを読んでほしい

www3.nhk.or.jp

というわけで、部活がきつい問題とか、教員不足問題とか、マネジメントクソ問題とか、早い人は15年前位から訴えていた問題が、ようやく対処に動き出した、という文言だけで今のところ現場は何も改善していない。COVID-19の対応により部活ができなくなり、一部の仕事が減ったり緩和したりしたという話も耳にする一方、逆に感染状況のリスク管理(家族に感染者が出ていないかのチェックや毎日の体温計測)など、事務仕事が増えたという話も聞いている。対応は基本的に各自治体の教育委員会ごとに決定するので、地域ごとに違うそうだ。専門家ではない教育委員会が適切な決定ができるとは思えない、というストレスがあるという話も、僕が主催している勉強会で教員のかたが発言していた。

教員の労働環境の悲惨さが広がり、教員志望者が減り、現場は人手不足でさらに労働環境が悪化する、という悪循環が根本的な問題であり、財務省は全くもって財布を開かないので、対応する予算も十分にない状態だ。

そうした教員志望者を増やす方法として、思いついたのが、教員として雇用された場合に、雇用形態に限らず、奨学金の代理返済を行うというものだ。インスパイア元としては、2022年の4月から日本で一番奨学金を貸している団体が、代理返済の仕組みを導入するという。

www.sankei.com

企業としては、税金がかからないため、節税になるという部分でフィーチャーされている。背景には大学の法人化による授業料の増額や大学生のふたりに一人が奨学金を借りている現状などがある。

当然教員志望の学生たちも、奨学金を使って学ぶケースは多々ある。いざ教員になって、二十代のうちは薄給で若いからと多くの仕事を振られ、遅くまで仕事を強いられ、時給はコンビニバイト並み、給与をもらってもそこから奨学金の返済があるためほとんど自由を得られない、という話も聞いてきた。

そこで、教壇に立つ仕事についた場合、雇用の形式に関わらず、給与と別に国が奨学金の肩代わりをしてあげれば良いのだ。もしくは教員志望者用の奨学金の枠をもっと充実させるか。

そもそも教員になる場合、奨学金は返済しなくても良い、という特例が昔あったのだが、いつの間にか消えていた。大学の奨学金に限定することで、進路として倍率が減っていると聞く教員養成のコースに入る学生が増えるし、教員採用試験の倍率も上がり、教員の質を担保できる確率が上がる。全ての教員に適用される制度ではないため、なんらかの手当を出すよりも予算は安上がりになる。自治体がさらに一人当たり月5000円とか1万円とかの金を出し、返済額を増やせば、採用倍率における地域格差を埋めることもできる。(例えば東京都は地域手当が高く支給され、地方と給与格差が生まれるため、他の都道府県からめちゃくちゃ人材が流入してくる)

フラッシュアイデアではあるが、そもそも教育現場が人手不足である限り、教育現場に求められる無限のリスク管理に対し、対応できる限界が発生する。アクシデントが起こらないよう校則などで学習者の縛り付けを強くするしかなく、学習者を交えて審議している余裕もない、と押しつけ型の校則を作り始める。それに乗じて下着の色を指定するなど謎の校則も生まれてしまう。

長期的には予算を確保する方向で動くか、テクノロジーを使って管理を楽にするように動くにせよ、短期的に奨学金の代理返済は十分な福祉になるのではないか。

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showgotch.hateblo.jp

 

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