社会的責任が求められる割に年収下げられて多忙感が増えるのに志望しようとする優秀な学生はどこから来るんでしょうかね?

 おひさしぶりです。タイトルで言い尽くしたのだけれど一応本文も書いておこう。教育問題は教員不祥事問題みたいに個別に見ると格別なゴシップエンターテイメントなのだけれど、制度としてみるとやっぱりグルーヴヤバめ。教育改革はいいのだけれど、たいてい教育制度の移行期間は大して教育成果が上がらないのをそろそろだれか検証して報告してほしい。
 書いてみて思ったけれど前回のエントリと内容があまり変わらなかった。
体罰とかで騒いでる暇ないよこれから学校教育は本当に苦難の5年を迎える - 技術教師ブログ

 財政制度等審議会財務相の諮問機関)は28日、2014年度予算案の編成に向けて、小学校や中学校の義務教育に対する国庫負担金の大幅削減を求めることで一致した。委員からは、少子化に伴って「児童・生徒の減少に合わせ、教員の削減はやむを得ない」などとする意見が相次いだ。
 一般会計予算の2割近くを占める地方交付税交付金に関しては、リーマン・ショック後の景気対策として導入された「別枠加算」(約1兆円)の廃止を総務省に求めることでも合意した。ただ、地方自治体からは継続を求める声が強く、年末の予算編成に向けた調整は難航しそうだ。
 財務省は28日の会合で、子ども1人当たりの教員数を維持しながら定数を2000人減らし、高い給与水準を地方公務員並みに引き下げれば、14年度の国庫負担金が約370億円削減できるとする試算を提示した。委員から異論は出ず、「良い教育のためには教員の数を増やせばいい、という考え方は古い」などとして大筋で了承された。(2013/10/28-16:08)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201310/2013102800602

 日本の教育の迷走は文科省の優しさと財務省のケチさによって成り立っているのだけれど相変わらずの酷さである。

 下村文部科学大臣閣議のあとの記者会見で、財務省少子化による児童生徒の減少に合わせて小中学校の教職員の定数を減らすべきだと主張していることについて、「教育予算の自然減は教育環境の充実に充てるべきだ」と述べ、財務省を批判しました。
 文部科学省は、少人数教育の推進やいじめ問題への対応などを強化するため、来年度からの7年間で小中学校の教職員の定数を3万3500人新たに確保すべきだとしていますが、財務省少子化による児童生徒の減少に合わせて、逆に1万4000人減らすべきだと主張しています。
これについて下村文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「日本の教員1人当たりが受け持つ児童生徒の数は、OECD経済協力開発機構の加盟国の平均より多いというのが客観的事実だ。少子化で減少が見込まれる子どもの数と同じ比率で教員を減らすのではなく、むしろ教育予算の自然減を教育環境の充実に充てるべきだ」と述べ、財務省を批判しました。
そのうえで下村大臣は、「学校現場は複雑化、多様化しており、少人数教育の推進やいじめ問題への対応など、個別の教育課題に対する的確な対応が求められている。財務省には、国家観に立ち、これからの日本をどうするかという視点から十分な理解をしてもらう必要がある」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131029/k10015638361000.html

 これに対して僕の周囲でも、お金要らないんじゃないの?とか競争が激化すると実力のある教員が残るからいいよね、とか言い出す教育NPOの代表とか学校の中の人がいてびっくりした。この業界がいっこうに改善しないのは、周囲もそうだけれど中の人達が全く問題を理解してないことに原因があるのだなと感じた。
 書いてある通りOECD平均より教員一人当たりの受け持ち児童数は多い。教員一人当たり17人程度と言われているのだけれど、実際個人的に調べたところだと、小中学校の教員の一人当たりの受け持ち児童生徒数は、岩手で一人当たり13人、北海道で77人であった。何が問題かと言うと、北海道では曜日によって勤務校が変わるのは当たり前、教員がたらないので社会の先生がやったことも無い美術を臨時免許で教えたり、要は場所にもよるのだろうが免許外教科を教えることが制度としてほぼ前提となっている。実は水面下で全国の免許外教員問題が顕在化しつつある。教員数は保たれていてもどう考えても教育の質は保たれない状態になりつつある。

長野県松本市の私立小中一貫校・才教学園小中学校(児童・生徒数498人)は20日、必要な免許を持たない教員に授業や担任を受け持たせていたと公表した。2005年度の開校当初から続いており、延べ64人を不適正に配置していた。県に担任を届け出る際、免許を持つ別の教員名を虚偽記載していたことも判明。県は教育職員免許法違反に当たるとして、補助金の支給停止を決めた。

http://mainichi.jp/feature/news/20130821ddm041040141000c.html

 三重県立白山高校(津市)の家庭科で、免許がない講師が授業をしていた問題をめぐり、県教育委員会は5日、白山高を含む7高校の計11科目で、無免許の教諭や講師が授業をしていたと発表した。無免許授業を受けた生徒は延べ534人で、うち延べ336人は現役という。

 県教委が県立57高校と13の特別支援学校で、2011〜13年度の実態を調べた。白山のほか、水産、明野、名張西、伊勢、稲生、鳥羽の6高校でも無免許授業があった。科目は、公民科の現代社会、地理歴史科の世界史A、農業科の総合実習など。

朝日新聞デジタル:三重の7高校で無免許授業 教諭や講師、計11科目で - 教育

 そうして足りない先生は非常勤講師から補充されることになる。雇用の調整弁と教育費のダンピングとして非正規雇用教員が増加していることは以前にも指摘したが、最近はこんな記事もでてきていた。

今、教育現場が直面している新たな課題が、臨時採用、つまり非正規雇用の教員の増加です。
全国の公立の小中学校で、今年度、6万3000人余りに上り、自治体によっては6人に1人を占めていることが文部科学省のまとめで分かりました。
十分な研修を受けられないまま、担任に就くケースも出ていて、教育の質の確保が課題となっています。

http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2013_1021.html

もう4年前位から増田ユリア氏が指摘して来てたけれどね。
 教員はもっと努力しろ、授業をわかりやすくしろ、生徒の面倒を見ろ、もっと論理的に話せ、ちゃんと方法を教えろ。どの指摘ももっともなのだけれど、時間があってもお金がない教員と、お金があっても時間がない教員と、要領が良くてそれなりにこなしている教員と、なんか極端な状態になっている。時間がない教員はどうなって行くかと言うと、心の病気にかかるか、病気にかかる前に仕事をセーブするかである。

2013.10.17 12:10
 小中高校などの教員の残業時間は月平均約95時間半で、10年前の平成14年調査より約10時間増えていることが17日、全日本教職員組合(全教)の調査で分かった。学校での残業が約73時間で、自宅で仕事をする時間が約22時間半だった。
 全教は「生徒指導や保護者対応で忙しくなったほか土日の仕事が増えて残業時間を押し上げている。長時間勤務の解消に取り組むよう教育委員会などに求めたい」と話している。
 調査は、組合員を中心に全国の正規と再任用の教員を対象に24年10月の勤務状況を質問。5880人が回答した。小中高校別では、小学校の残業時間が月94時間21分、部活動が増える中学は114時間25分、全日制高校は100時間47分。月100時間以上の教員の割合は小学校34%、中学52%、高校40%だった。
 残業内容は部活動や授業準備、報告書の作成、会議など。土日の出勤や家で仕事をする時間は月25時間35分だった。14年は5〜6月の勤務実態を調査した。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/131017/edc13101712100000-n1.htm

日教組叩かれすぎてこの10数年は働いてくれないので教員の労働環境は改善しません。

 先生は忙しい。その忙しさは解消されるどころか、うつ病など心の病で休職した公立学校の教員が2008年度から4年連続で5000人を超えるなど現場の疲弊は深刻さを増すばかりだ。昨年から今年にかけて東京都のNPOが全国の小学校教員を対象に実施したアンケートからは、先生の焦燥感や不安が色濃く浮かび、手厚い支援を望む声が聞かれた。
11時間半労働
 調査はNPO「日本標準教育研究所」が実施。昨年3月〜今年1月まで、テーマ別に計3回にわたって延べ約1000人から回答を得た。
 教師の仕事で悩んでいることを尋ねたところ、上位三つは「自分の時間が持てない」「保護者との関係」「特別支援が必要な子供への対応」だった。
 調査の結果、学校にいる時間は平均「11時間半」。東京大社会科学研究所が調べた全産業の平均(10時間半)に比べ約1時間長い。その上、9割が帰宅後に自宅で仕事をすることがあると回答し、休日出勤も月平均2・2回だった。
 自由記述では「外国語活動、他校との連携、総合学習など、やらなければいけないことが多く、じっくり授業を組み立てられない」(教員歴29年、千葉県、女性)、「家族との時間が持てない」(同20年、東京都、女性)という悲痛な訴えも目立った。教員の多忙化は、国が定数増など対策を打ってはいるが、解消されていない実態が浮き彫りになった。

http://mainichi.jp/feature/news/20131028ddm013100019000c.html

打開策として、要望が最も多かったのは「時間的な余裕の確保」(75%)で、次いで「学級の定員減」(60%)。1クラスの定員は現行は40人が上限。小学1年は法改正で11年度から、小学2年は予算措置によって12年度から、それぞれ35人学級が全面導入されているが、対象学年の拡大を望む声が強かった。
 さらに注目すべき結果は、半数の教員が「教師同士の協力関係」を要望した点だ。裏を返せば、教員が互いの悩みを打ち明けたり、先輩教員からアドバイスをもらったりする機会がない現実を表している。
 今回の調査を担当した元小学校教員の増田修治・白梅学園大准教授は「今の学校教育は先生たちの自己犠牲の上に成り立っている実態が改めて分かった。だがこれは本来の教育の姿ではない。先生の環境改善が急務だ」と話している。【三木陽介】

http://mainichi.jp/feature/news/20131028ddm013100019000c.html

 とまあ改善の余地って山ほどあって、わかりやすいところを提案するなら部活指導の全面廃止。給食指導の支援員の派遣。やりたいなら学童のように選抜された地域の大人が(セクハラとかしごきとかあるかもしれないから)適切な監視の元でボランティアでやること、それと書類作成や印刷等雑務の3割減、講師の保険と研修の保障が可能となって、はじめて給与削減と教員定数削減が可能となる。
 それから実は教員定数削減に我々が対抗する方法はある。教員の給与は国が半分、自治体が半分持つことになっており、教員定数とはその給料の算出に使われる基準のこと。なので、教員が必要だと思っている自治体は教員の雇用にもっとお金を出していいことになっている。皆近所の人を巻き込んで、役所や教育委員会や市長へ教育費を捻出するよう要望書やメールを送ってその必要性を叫ぶ声が票につながると判断されれば何とかなるかもしれない。
 ところで本題なのだけれど、これからこれだけ激しい教育現場に入ろうと思う能力や情報感度が高い教員はいるのだろうか?ベテランの腕のある先生がことごとく教育現場を離れたり(だって大学の先生になれる位のポテンシャルがあって私立からも引く手あまた)、若い教員は教育困難地域から離れて他県の教員採用試験を受験したり、大阪では悪政のおかげで講師すら足りない状況だと言う話を聞く。数名だが僕の交流のある学生だった人達も、学生の頃は教育NPOや団体で活動したり教員免許を取得したのにも関わらず企業へ就職してしまった。社会人経験してから教育現場に帰ってきたいとは言っていたが、彼らは帰ってくるのだろうか。教員採用試験の受験者数は増えているが、競争倍率はこの10年で3分の2に減っている。教員にはなりやすくなっている状況だ。今までが競争が厳しかっただけなのだろうか。

 大阪府教委は25日、大学2、3年生や社会人らを対象にした「教員チャレンジテスト」(仮称)を来年度から始めることを決めた。一定水準に達すれば、翌年度以降に受ける教員採用試験で1次の筆記試験を免除する。府教委によると、教員確保のため学生らを早期に「囲い込む」のが狙い。全国初の取り組みという。

 テストでは生徒指導論など教員に必要な教養などを重点に問う。2015年度実施の採用試験から免除を適用する。免除の有効期間は2年で、1次面接や2次以降の試験は受ける必要がある。

 大阪では、1970〜80年代の人口急増期に対応して増えた教員の大量退職が進んでおり、近年は年2千人以上を採用している。最終倍率は4倍ほどだが、志願者数は減少傾向。中学理科など特に確保が難しい教科もあり、質の高い人材確保が課題になっていた。理工系学生は実験実習が本格化する4年生を前に受験でき、採用試験の負担を減らすことができるという。

http://www.asahi.com/articles/OSK201310250046.html

 ■小学教諭2人と意見交換

 県教育委員会事務局の職員を学校現場に100人規模で異動させるなど現場の教職員を充実させる県の教育改革に関連し、県東部と西部の30代の小学校の男性教諭2人が11日、知事室を訪れ、「35人学級はありがたいがそれでも人が足りていない」などと訴えた。これに対して川勝知事は、教員免許を持っていなくても地域の子育てに関心が強い住民をボランティアで各校に配置する考えを提案するなど、現場の教師と意見を交換した。

 男性教諭2人が「子供には理解度などで個人差があり、対応するために時間や人手が必要。少ない人数では授業がなかなかできない」と知事に伝えると、知事は「今年度から全校で35人学級を行っているが、学級が増えると授業が増えて先生の空き時間が減るというマイナスもある」と述べ、教育委員会事務局の270人のうち、100人を教育現場に戻す改革について説明した。

 さらに、男性教諭2人が、小学校の各学年に1人ずつ学級外の教諭を配置するために「3〜5人必要」と述べると、知事は「500校で3人必要だとすると全部で1500人必要。若くて教職免許を持っている人だけでまかなうのは無理だ。免許はなくても“助っ人”として、1千人ぐらいがボランティアで学校現場に入れば」と、地域のPTA会員を学習の補助員などに起用する考えを示した。

 教諭2人は「免許を持っていないとテストの採点もできないことになっている」と話すと、知事は「あまり形式張らなくてもいいのでは」と応じた。

 面会後、教諭2人は「人が足りないと学力向上につながる厳しい指導にも及び腰になるところもある」と話していた。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/131012/szk13101202330003-n1.htm

 いま、現場は制度が変わるまでの消耗戦を強いられている。本来持っているパフォーマンスも発揮できず、身体的な疲労、精神的な疲弊、社会からの批判、それらを耐えながら教育、労働、子育て、福祉制度のバランスが改善されるのを待っている。まだまだ教育現場の迷走はつづきそうである。