人間性から関係性へ-20歳までに出会っておけばよかった本の補足

二十歳までに出会っておけばよかった10冊 - 技術教師ブログ

200ブクマ位言ってほしいと思いながら記事をちゃちゃっと書いたらまさかの1000ブクマを記録してしまいました。あの程度の記事で本当に申し訳ございません。でも僕がチョイスしたのは寛大になるための本です。自己啓発目的ではありません。

出会うことについて

 今回の記事の対象年齢は18歳〜20歳という設定です。このころに「出会っておきたい」と書いたのは「読んでおきたい」本ではないから。
「情報は溢れることで価値のないものになろうとする。だが適切な時に適切な場所で与えられる情報は非常に価値の高いものになる」
というのは情報と教育を扱ううえでの重要な概念です。積ん読でもよいので本と出会って手元に置いておけば、失恋なり挫折なり、何かきっかけが起きたときに読むことで自分の中で非常に価値のある情報になる可能性の高いモノを選んでおいたわけです。さらにそこから別の本に手を出す可能性や同じ著者の情報にアクセスすることで様々な視点を得ることでしょう、そういう機会としての「出会う」なのです。無理に読まないでください。

 本をチョイスしたコンセプトは「モノの見方が変わる」本。
 特に「人間は人間性でなくその関係性で行動が変わる」ということを強く理解してもらうための本をチョイスしました。組織でもいい、友人関係でもよいです。例えば私とあなたが尊敬しているのか、無関心か、知らない人なのか、見下しているのか、それぞれがそれぞれをどう思っているのか、人間関係を分析することによって見えてくるものがあります。
 例えばPCはスペックが高くてもネット回線が遅ければ仕事に差し支えが出ます。ネット回線が早くてもスペックが低ければうまく機能しません。人間性と人間関係のバランスこそが大切であることのアナロジーです。
 例えば教育問題に置き換えれば、日本が荒れているのは教育が悪い、そして教師の質が低いせいだという言論に収束しがち、しかも免許更新制度も出てきた当初は不適格教師のフィルタリングが目的として明示されていたわけです。しかしよくよく調査してふたを開けてみれば、実は教師の質はむしろ世界的に見ても高いものの、教師と生徒、教師と保護者、教師と社会の関係性が悪くなっていたことが問題であった。モンスターペアレントも、最初から奇怪な行動に出るわけでなく、教員に対しての不満不信が爆発して行為に出る現象であった、問題の本質は関係性であったことが指摘されています。教師が無能だからだっていまだに主張している教育ジャーナリストもいますが。
 今回はその手の教育関係・仕事関係の本は伏せてあります、本当なら個人的に印象深かった鈴木謙介の「カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)」とか最近だとニューアカ、シドノス系、心理学者や社会学者の「社会構造ちょっとおかしいんじゃない?」的な本、ドラゴン桜関係の「自己啓発なんかするな!」といいながら自己啓発する本なんかも紹介したかったのですがいずれ出会うでしょう。あと小説やコラム本なんかは極力除外しておきました。

第二の圧力について

 今回面白いのはそんなもん読むなよ、という声が聞こえてきたこと。それは多分本の質云々じゃなくて、ブクマの数によるものじゃないかと考えます。一つは、婚だけの人がブクマしてるんだからこの本は抑えといた方ががいいのではないか?という圧力。「出会っておきたかった本」がいつの間にか大勢の人に「読むべき本」と解釈されている。

 もう一つはブコメネガコメをした方々のどこかに「多くの人がこんな記事に影響を受けている!これまずくないか?」的な感情があったのではないか。
これは第三者効果仮説といって「自分以外の人たちはメディアに影響を受けやすいのではないか」という心理バイアスがかかることを言います。
わざと自己啓発書を何冊か入れたわけですが、これに対してもネガティブな反応がある(かもしくは記事自体に対して閑古鳥が鳴く)ことは予想してました。でも普通の人であればそこは丸のみせずに認知に対しある程度のコントロールを行うでしょうし、僕は自己啓発書の中でも思考法と分析法の本を選びました。それらの思考法は今でも仕事に十分に生かせています。
 一方で、ネガコメのあなた方みたいに自己啓発にはまらずに仕事ができたり社会の欠点に気づいたり多くの選択肢から自己決定自己選択できる人なんて多くて2割でしょう。残りの8割の人たちのためにエントリを起こしたのです。僕もその8割の中の人間です。

自己啓発(笑)について

 僕はどこに出しても恥ずかしくないくらいドロップアウト気味の学生時代をすごしていました。「当時付き合っていた彼女」のためと「死にたくない」以外に生きる理由がない、享楽的で共依存型恋愛な生活をしていました。
 少し自閉気味(小学校でそういうグレーゾーンなデータが出たことは後から知った)だったこともあり、他人を理解することを拒み、「何でみんな俺を理解してくれないんだ?」と言いながらダンスで自意識を撒き散らす、そんな生活をしていました。その溺愛していた彼女に振られ、「人に好かれる〜」みたいな自己啓発本に手を出したのが変化の始まりでした。
 ただ世の中には自己啓発があふれていて、それによって社畜精神やら労働環境やらライフハックやらで自己啓発教の弊害が起きていることを後々知るわけで、今現場でそれと戦っているわけですが、それは20歳の頃の自分には必要ないと思ってます。
 そのコンボとしては夢をかなえるゾウ自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)が当時最強だったわけですが、少なくとも自己啓発本の精神論はほどほどに吸収しながら具体的ライフハックや小手先の技術によって仕事に対する行動基準が見えたことはメリットだったと思っています。
 自己啓発に対しての態度は以下

私は自己啓発を大いに進めるべきであると考える。
足下が崩れてからが本当の自己啓発の始まりである。そういう意味で、若いうちは周りに大きく迷惑をかけない程度にこけたらいい。痛い目を見ればそこがスタート地点となる。

自己啓発をやめろ、自己啓発をするなという意見ももっともだが、それは児童ポルノが犯罪を誘発するから禁止しろという理論と大して差がない。

大事なのは偏りをなるべく無くすことなのだ。

少年犯罪にせよ、有害なテレビ番組や本などのコンテンツに影響を受けたから規制しろという世論がかならず出てくるが、世の中に影響しないものなんて無い。ならば、中立・最適な判断が出来るように様々な意見や視点を得ることが重要となる。

また、(自己啓発を必要とするような)自分探しをする若者は方法を知らないのだ。
若者は勉強の仕方を知らないのだ。それは今何千人の普通の若者に囲まれて暮らしている僕だからこそ断言したい。

自己啓発にもメリット・デメリットは存在する。であれば、自己啓発も一種の技術・道具として扱うべきだ。
メリットとして、モチベーションが上がったり仕事の効率が上がったり、視点をずらすことで心の持ち用や無駄な争いを回避したり、自己啓発のメリットも折り合いながら生きる社会においてバカには出来ない。従来はこちらに偏りすぎていた。
デメリットとして、そこにつけ込む人がいるという事。搾取される構造があると言うこと。これも最低限知らなければならない。

http://gijutu.blog.drecom.jp/archive/180

言及していただいた記事について

言及ありがとうございます。技術系教育者ではなく技術教師です 笑

 素敵なリストありがとうございます。
那須氏の本はずっこけ嫌いだったんですが別の面白い本を図書館の司書さんに紹介された記憶があります、さっき探してみたけどありませんでした。

とりあえずid:amamako君がいい感じに誤解してくれたのでこのエントリ起こしました。
またこのリストも面白いところついてきますね。

何度も言うけど、自分が読む本は自分で決めるものだ。僕は、一応↑でお勧め本を提示したけど、それはせいぜい「ブックオフでこんな本を見かけたら立ち読みしてみて欲しいなー」という程度のお勧めでしかない。最終的には自分が読みたい本を買うべきだ。そして、自分がどんなジャンルに興味を持つ人間なのかを知ること。実はそれこそ、ただ一つの、十代のうちに絶対すべきことなのだ。

 言葉足らずですいません。基本的にまったく同じことを考えてるので、id:amamako君が不快感を示したとしたらそれは第二の圧力に対してでしょう。第三者効果仮説かもしれない。後藤和智氏と同じ匂いがする。
 id:amamako君が読んだことのない本を紹介できたことこそポイントだと思ってる。ちなみに今もブックオフの100円コーナーめぐりはしています。1日に4件位古本屋を回ることもあります。

ネガティブな内容であれid:finalvent氏に言及されるとかうおおおおお、ってなりました。この手の本選んでよければ俺だって高校の頃読み漁った山田詠美とか吉本ばななとか選びたかったよ。特にねじめ正一の「かなしい恋愛 (文春文庫)」なんかは子ども心ながらに何とも言えない気持ちになったし、島崎藤村なんかも好きだった。二宮ヒカルの漫画についても紹介したかったよ。ナイーヴ 1 完全版 (1) (ジェッツコミックス)とか恋愛に臆病な人間描写といい名言の質といい、自分の中で最高評価の作品。別に文学少年とか本が特段好きなタイプとかだったわけじゃない。読んでいたのも数冊程度だし、「往年の名作」みたいなのはまったく手をつける気にならなかった。川端康成なんて爆発しろと思っていた。なので5つ星の本は除外しました。

 また、id:NATROM氏が一つ紹介してくれた。竹内本よりお勧めのファインマンさんをご紹介いただいた。「常識を疑え系でわかりやすいものを一冊」、と選びましたが、科学の本はなんであれ疑わしくないものはないので悩んでおりました、非常に感謝しています。このエントリを持って感謝の言葉に代えさせていただきたいと思います。

科学は不確かだ! (岩波現代文庫)
リチャード・P. ファインマン
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おすすめ度の平均: 4.5
4 価値ある話。
5 トレーダーとしてのレヴュー。
5 科学的態度とは
4 懐疑主義を名調子で語るファインマン氏の講演録
5 名文と名訳