図書館で借りてきた。フィットネスで自転車こぎながら読んでたけれど、ライトノベルばりの軽い文体で、すーっと耽美な世界に引き込んでくれる。性別、血統、神様、様々な要素が泡のように出てきては、捕まえられる事も無く上へ上へと離れていく独特の感覚は面白かった。
本作「神様が殺してくれる」は森 博嗣 による幻冬舎創立20周年記念特別書き下ろし作品。大学のルームメイトだった女性以上に美しい男、リオンによって、殺人事件に巻き込まれる話。リオンは遺体の隣で裸で拘束されたまま寝転がっていて、主人公が殺した、と供述する。あとはもう犯人を追ってヨーロッパ中を駆け巡って、最後は日本で事件の全貌が明らかになるのだけれど、その辺はぜひ読んで確認していただきたい。
なんとなくそんなことは無いよなー的なこちら側の予想を、最後に見事に全部ぶっ込んできたあたりさすがだなという終わり方。よく読んでみると至る所に伏線が張り巡らされていて、それは何を書いていて何が書かれていないのかを読み取らなければ見て取れないものでもある。
同時に作中、既婚者の主人公が何度もリオンに心が揺さぶられる様が描かれる。主人公は何を愛したのか、何を愛したかったのか、それを追求もせず理性ですべて押さえ込んでしまうあたり、まともな作品でもあった。もっとリオンと寝ちゃうような描写があっても面白かったかもしれない。