アウトサイダーコミュニティとの付き合い方-メディア評-漫画「荒川アンダーザブリッジ」

 連載が再開して今月新刊が出るらしいので紹介。ナルシストで会社経営者の主人公がある日突然ホームレス達と川の下に住むという破天荒漫画。
 ガンガン漫画のくせに登場人物達のキャラ付けがファンタジーの領域を越えない、絶妙なギャグ漫画。カッパの背中にはチャックがあるし天狗は催眠術を使う。
荒川アンダーザブリッジ | ヤングガンガン | SQUARE ENIX

 本書は並行して連載している聖☆お兄さんが海外でも話題になっている中村光氏によるギャグ漫画。イケメンで御曹司だけれど少し不思議な育て方をされた主人公が、ある日、自称「金星からきた」美女に命を助けられ、その恩返しのために恋人として橋の下に住むことになる。
 橋の下にはカッパだの星だの鉄仮面だの鳥だの侍だのが住み、毎日がマジキチだらけの大運動会でとうぜん主人公リクは訳の分からんイベントに巻き込まれては被害被る、王道的ギャグ漫画である。
 一方で金星ヒロインは、金星に帰る期日が決まっていて、別れが近づいてくるに従ってリクはヒロインに惚れていく、現代のかぐや姫なのであるが、なにか現実離れした大きな財力が働いていたり、橋の下へ続く階段が出来たりできなかったり、いつ夢オチになるのかと思わせながらもそんな臭いを吹き飛ばす位に東條キャラクターたちは生命力に溢れている。
 年末年始にかけて原作、アニメ、ドラマ、映画と全て見たのだけれど、特にアニメ版は最強だった。原作の設定をあまり壊さずちゃんと描いた上、毎回巻頭で行われていた意味不明なポエムをちゃんと昇華しマジキチなキャラクター達との対比によるロマンチックさを鮮やかに表現している。ところどころ絶望しそうだったり怪異に殺されそうな声だった主人公の声も主題歌も背景の描き方も、すべてが荒川の世界を原作以上に演出していた。このキャラクター達が愛おしく、別れたくないと思わせるのには十分だった。本当に出会いに感謝できる作品で、連載休止していた原作が再開され、また読めるのが楽しみだ。