国立競技場の問題は音楽業界の問題じゃないの?

 2020年のオリンピックに向けて国立競技場の建て替えが進んでいるが、その屋根のデザインをどうするかでもめているらしい

2012年にイラク人女性建築家の斬新なデザインが採用され、この段階では1300億円で建設されることになっていた。しかし、その後、総工費については、発注主体である日本スポーツ振興センター、設計会社、ゼネコンなどの間で様々な数字が飛び交うことになり混乱。先月ようやく総工費を2520億円とする計画の見直し案をとりまとめた。基本設計も、計画していた開閉式の屋根が、当面つけられないなど、大幅な変更を余儀なくされた。

NHK クローズアップ現代

 正直屋根なんぞ問題なくて、議論すべきは多分座席の数だと考える。
これは実は日本のエンタメ業界の限界の問題ではないかと思うのである。
日本の一番人が入るライブ会場、フェス会場を除くと横浜の日産スタジアム7.2万人、ついで埼玉スタジアム6.3万人となっている。*1各ドームが5万人前後で一番入るのが北海道ドーム、レース場をいれれば一応東京競馬場が22.3万という人数が入ったりはするが、恒常的にライブを行える環境ではないし、屋根がない。
 簡単に言うと、チケット代をあげて高級志向には知らない限り、1回で稼げる額は客席数で頭打ちになってしまう。しかもライブの売り上げのほとんどは会場費として支払い、グッズ代で収益を得ているようなビジネスモデルが現在のスタンダードであると聞く。
 例えばドリカムがドームツアーをひたすら行っているが、これを新幹線降りて30分の都心に10万人、希望を言えば15万人入るような、天候に左右されないライブハウスができると、単純計算で3日間で稼ぐ額を1日で稼げるようになり、回転率も収益率も上げることができるし、収益率が上がると舞台装置や演出、ダンサーやスタッフなどの人件費に投資できるお金は爆発的に増える。youtubeなどで海外にプロモーションする手段もかなり格安で得ることができる現状や、これから脱工業国として観光やエンターテイメント産業で外貨を稼いでいかなければいけないという僕個人の予想を踏まえると、屋根のデザインが高い安いを議論する前に座席数を8万にとどめるだけでよいのか、という部分に論点を当てた方が良いと思うのである。
 韓国と日本に於けるコンテンツ産業関連の予算は約2.5倍、収益も3.5倍違うという話も出ていて、文化庁による劇場・音楽堂等活性化事業予算も300億円程度、スポーツ施設としてだけでなく、この辺の文化振興費、コンテンツ振興費として国立競技場の予算を考える(それでも高すぎるとは思うが)として考えるとまた違う意味合いが見えて来るのではないか。

参考:日本には10万人収容の競技場は存在しない
GLAY EXPO - Wikipedia

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