教育実習の時期だと聞いたので、これからセミナー講師や授業をする人向けに自分の経験や見聞からいくつかアドバイスを記録しておこうと思う。この手のアドバイスは細かく書き出せば100くらいいってしまうのが教師の専門性らしいのだが、ぼくは難しいことを話すつもりはないし、なによりも目的意識を持つことが大事だ!みたいな話をするつもりはない。なぜなら実は教育実習はやる気のない大学生にとってこそ非常に大きな影響を持つイベントだ。やる気のなかった学生がこのままじゃダメだと急に勉強に目覚めたり本当に先生を目指そうと決意を決めたりすることが多い。逆に少数だがこれで適正がないとあきらめる人もいる。要領の良さがものをいうし、時間をかければいい授業いい教育ができるという訳でもないので、そこらへんのバランス感覚を経験してもらいたい。
1.自分から関わりにいかないと関係性はできない
教育実習のとき、ろくに指導してもらえなかったという感想が一番多いのだが、実は先生方は実習生をわざと放置している。自由な時間を与えて自分から生徒や先生方へ関わりにいくようしむけているのである。実習期間の学校における関係性は3つしかない。1、先生との関係、2、生徒との関係、3、実習生同士の関係である。
特に指導教官との関係はちゃんとつくっておくこと言われたことを待つだけでなく「相談があるんですが」「確認したいんですが」「教えてほしいんですが」と最初に言葉をつけて用件を伝えること。用件がハッキリしないと相手はアドバイスを与えられないのでお互いの時間が無駄になってしまう。話し終わった後の「ほかに打ち合わせや確認しておく必要のあるものはありますか?」は意外と効果絶大だ。お互いに取ってタスク整理ができる。メモは必ず取ること。
生徒や実習生仲間とは空気呼んだりせずできる限り情報交換しておこう。セミナーの場合はお客さんの情報収集だ。特にクラスに1〜2人いる情報屋さんは押さえておくと人間関係まで把握できるので授業や実習に還元しやすい。
2.授業の達成目標は4つ
授業ってのは瞬発力でできるものではない。基本的に展開を構成する必要がある。展開を記録するために指導案がある、この目的は2つ、頭の中の整理と人にこの授業で何をやりたいかを伝えるためのものだ。指導案や学習計画を練るときは、目標を「知る」「わかる」「理解する」「できる」の4つで記述すると良い。到達点が明確だからである。「知る」は授業で教師が口頭で触れるだけ。「わかる」は問題を出せば単語を答えられる状態、「理解する」は自分の言葉で説明できること、「できる」は細かな動作や習慣付けなど行動や態度を変容させたい場合に使う。授業導入でニュースについて知る、全員が跳び箱の6段をとぶことができる、などである。逆に言えば、○○力を身につけるなどの抽象的な言葉は再現性がなく冗長な害悪でしかない。客を呼ぶための宣伝文句と具体的に得るスキルや能力は必ず切り分けなければならない。
さらに大事なのは目標を1時間に3つ以上ならべないこと。これは頭の中で優先度を整理する訓練であるし、人間(生徒や学習者)は一般的に短時間で覚えられる内容は7つ前後。大事なのは忘れないように時間を空けて復習の機会を用意することだったりする。
3.生徒の活動と自分の活動を書く
指導案を書くことを前提に、基本的に自分(教える側)と学習者の活動を平行に考え記述していく必要がある。
授業の留意点に「がんばる」みたいな自分の心持ちなんて書かない。教師がなにをするかだけでなく生徒が何をどういう思考過程で学ぶか、を想定して学習者の活動を書かなければならない。大事なのは何をするか、出なく何をすることで何を学ぶか、というメタ構造である。そのためには事前に学習者は何を知っていて、何を知らないか、を想定し、その想定の精度をどんどん高めていく必要がある。
4.1つの授業をつくるのに、授業時間の10倍の時間がかかる
指導案ができたら授業のリハーサルを脳内であれ現場であれ繰り返す必要がある。なにをやるか、何をやりたいかは後回し。達成したいことの優先順位を決め、導入、活動、振り返りで1つの授業を完結させる。守破離という考え方がある。オリジナリティを出すためにはまずよしとされている伝統を守り追求することから、その伝統を破り離れて自分らしい授業を行うということだ。最初からオリジナリティの高い授業なんてできっこないので、まずはトークとチョークで一通りのことができるように鍛えること。それから学習者の机に座ったり、自分の声を録音してちゃんと伝わる話し方かを分析すること。話すスピードは自分が思うゆっくりな話し方の2倍遅い位のスピードでちょうどいい。
5.言葉を言葉どおり受け取らない
言葉を額面通りに受け取っても傷ついたりぬか喜びするだけ。嫌いな先生に嫌いとはいわないし、基本的にはこのタイミングでこの相手が言葉を発するという行為を分析した方が良い。憎まれ口が助けを求める心の叫びだったりすることもままあることなので、学習者と対峙する自分に実存をおいてはいけない。常に客観的な目も同時に持つ必要がある。
現場の先生たちは学習者たちが憎まれ口をたたくのをわかっていてわざと先生も憎まれ口をたたきながら生徒との適切な距離を保てるよう振る舞っているし、何かあれば就業規則を破っても生徒を守ろうとして行動に出たりする(そういった武勇伝もたくさん聞かされてきた)。詳しくは死にたい奴は勝手に死ね - 技術教師ブログを参照にされたい。
