劇団ひとりがオビを書き、「蟹工船」が漫画化されたことでも話題になった「漫画で読破」シリーズ。小説から評論まで
コンビニで見つけるたびに買っていたらいつの間にか11冊たまっていたので簡単に紹介。仕事で使うつもりがないなら漫画で読んで十分だ。
わが闘争 (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21
多少単純化してあるのがこのシリーズの長所であり短所。本書は既存の本とは違いドイツの歴史と、ヒトラーがどうカリスマに成り上がっていくかに焦点が置かれており、ヒトラーの歪んだ人種観がどう醸成されていったか、非常に分かりやすく書いてある。
舞姫 (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21おすすめ度の平均:格調高い文体に対する食わず嫌い
おもしろい。
最後の救い
きっかけになる本
これはおもしろい。現在でも十分に通じる。森鴎外の名作、美しく悲しい名作として知られているが、実際のところ漫画でもきちんと表現されている主人公のヘタレ具合はガチ。
蟹工船 (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21おなじみ過酷な労働と労働闘争を主題に描かれた蟹工船。劇画調で少々親しみにくいが、労働や政治思想、社会の形態うんぬんよりも雇用者と被雇用者の関係性の問題を中心に描かれている。無駄に読みやすく良くも悪くも共感しやすい作品。
君主論 (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21君主論が出来上がった経緯や当時のイタリアを中心としたヨーロッパ情勢が単純にではあるがよくわかるけっこうな良作。君主論も紹介されているが、「官僚かくあるべき!」に落ち着いており自己啓発的な内容に落ち着かせようとしたのは残念。
レ・ミゼラブル (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21おすすめ度の平均:とてもうまく漫画化されています。
感涙
すばらしかった。
楽しめました(30分で読めます)
期待していたがちょっとガッカリ・・・・。原作が優れているせいもあり評判のいい一冊。フランダースの犬や赤毛のアンにも劣らない美しくも悲しい悲劇たち。そりゃミュージカルにもなるわ。ただ背景にある「贖罪」などの宗教観とか身分や格差とか、そういうものがもっと見えるともっとよかったな。物語の根底を流れるのは「愛」だというが、この「愛」も宗教的な「愛」なんだよな。
参考:レ・ミゼラブル - Wikipedia
悪霊 (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21おすすめ度の平均:哲学的で難解です。ハンディサイズの漫画で表現するには限界だったかなという気もする一作。ただドストエフスキー独特の人間描写は健在。不気味さなどもそれなりに表現されている。
神曲 (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21おすすめ度の平均:駆け足での地獄めぐり
とりあえず内容を把握したい人のために
ストーリーはよくわかる
漫画様様だわ・・
漫画としては物足りないかも賛否あるであろうこの作品、ダンテの「神曲」。地獄煉獄天国の世界観は十二分に表現している。地獄や拷問の描写などは軽めには書いてあっても嫌悪感を覚える人はいるかも。同時に当時の善や悪などの価値観も随所に見ることができる。
ドグラ・マグラ (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21おすすめ度の平均:ざっくりあらすじだけ
とりあえずマンガで,あらすじだけでも
原作は、文庫本の上・下巻で読んだのですが
入門編としてはいいかも
原作を読むための足がかりとしてあんまり見ても面白くないし、微妙にグロテスクなのでストーリー書いとく。主人公が起きたら病院で記憶がなくて殺人事件の犯人を知りませんか?って警察に言われて話を聞いていくと犯人は主人公で、しかも精神実験をされた結果正気を失った時にやってしまったよー」というものもちろん壮大で不気味すぎるオチが付くのだが、それは立ち読みでもするか原作を読んだ方が教養になると思う。あらすじだけざっと見る分にはよいかも。
死に至る病 (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21おすすめ度の平均:素晴らしい
悩める日本の高校生の目から哲学を紹介している。
哲学的思考
全体的に良い・・・が、その前に
わかりやすいこれは何とも評価しがたい。ステレオタイプの父親を持つアイデンティティのない高校生の主人公が、叔母にキェルケゴール哲学を学ぶというもの。高校生でも十分わかりやすく読めるしとかかりにはなる一方でそれまで哲学が踏まえてきたものを全く持って比較に出していないためただの読みモノに落ち着いてしまっている。超入門書といったところか。キェルケゴールの思想・哲学の背景などはウマく表現されている一方でヘーゲルが悪人だったり、絶望についてもはしょり過ぎて何一つ深い考察が出てこない一般論に落ち着いている。超単純化すればそうなんだが、「自信を持って自己選択をしろ!」という本書の結論は安っぽい自己啓発や思想にはなれど哲学ではないなという感想。しかし、難解な哲学の本をよくここまでわかりやすくまとめたなと苦労を推して測ると絶賛できる部分もある。
資本論 (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21これはひどい。「マルクスの資本論は労働どころか人間をお金に置き換える理屈だから爆発しろ!金銭至上主義は最悪の価値観だ!俺らは労働者の権利を主張するために立ち上がるべきなんだ!」とステレオタイプな拝金主義批判、自己啓発に陥ったストーリーで語られた作品。
学問のすすめ (まんがで読破)posted with amazlet at 09.10.21これはちょっとした問題作。いくつか出ている現代訳の学問のススメを近いうちに読んでみるつもりだがこの本だけ読む限り僕の中で福沢諭吉悪玉論が出来上がっただけだった。「他人への依存は悪」「責任を踏まえてこその自由」「独立者たれ」といった許容のない品格論のオンパレード。
江戸から明治への激動の時代を生き、ベストセラー作家となり幕府解体へ影響を与えた前半の福沢諭吉の半生にを読むのには非常に良い一冊。だが学問のススメの内容といえば陳腐な自己啓発に陥っており、本書を読んだだけでは個人主義や自己責任論など現代の病理の温床を作ったのは福沢諭吉ではなかろうかという気になってしまった。また学問観も本書に掲載されている分を読む限りでは微妙である。これほどまでに絶賛される福沢諭吉なのであるからもっと寛容で思慮深い人間であったはずである。
なお100年以上前からビジネス本に書いてある学習方法って変わらないのだな、と笑いが出たとともに本書のオチは結構好きである。
ハンディサイズにまとめたせいかわからないが全体的に結論が自己啓発によってしまっている傾向があるのは残念。ただ中学生でも読めるわかりやすさは本シリーズの強みだろうし、1日2〜3冊読破すら負荷なく可能だ。通勤の御供や子どもへのちょっとしたプレゼントにも使えるかもしれない。書店でも扱っているが、いつまで売っているかわからないので早めにコンプリートしたいところだ。