はてなの学力格差問題への関心が薄くて絶望した!!

というわけで少し紹介が遅れたがBenesse教育開発センターにて学力格差調査から見えてきた実践課題 − 分析を終えてという討論が公開されているのだが、ブクマが一つもなかった。教育ジャーナリストの渡辺氏のブログで知った。彼は尾木氏みたいに教育問題を「教員や保護者の精神のありようの問題だ」と批判するような態度は見て取れないので応援したい。

以下討論会の文章で印象に残ったものを記しておきたい。正直討論会の言葉すべてをここに引用したい。口から出る言葉すべてに含蓄がある。

山田  前提として、こうした調査結果を示す時の難しさを感じます。不利な立場に置かれている人たちに資源を投入するために実態を把握する。そうした文脈でデータが使われることを私たちは望んでいるわけです。ところが、今のように教育資源もセーフティネットも縮小している時に、家庭的背景による学力格差の存在を明示すると、敏感に反応するのは、むしろ相対的に大きな資源をもつ人たちではないか。その結果、公立学校からの流出など、リスク回避的な方向で子どもの学業達成を望む動きが出ることが危惧されます。

全国学力調査にせよ、調査を教員評価と競争原理によるモチベーションだととらえる風潮は強かった。教育調査や教育政策は前提として協力が必要であること、その調査は時に倫理的・道徳的でないと判断されることも考えられる。非常にデリケートな問題であり、一方で研究者にばかりモラルが求められるという風潮もすこし考えたい。

耳塚  政策を開示せずに調査結果だけ公表するのは世界でもむしろ少数派でしょうね。日本でも教育界は大勢として資源配分を活かそうとする方向にあると思う。それを組織的な政策へ上げていくには財源がいる。社会的合意を得ることが不可欠ですが、大都市圏のほうが難しいかもしれない。高学歴ホワイトカラーは、困難な学校に手厚く資源を配分し全体を底支えする政策よりも、卓越した部分を伸ばす政策を支持する傾向が強いからです。

調査と政策のかい離を嘆く。また学歴や地方か都市部かなどによる世論の違いも考慮しなければならない。

金子  問題は、施策を有効にするための条件整備の観点として、教員の立場から「教職員が安心して職務に従事できる環境があるか否か」という問題が十分に論じられてきたとはいえない点にあります。例えば現場の状況に応じて教育課程編成や授業時間の裁量権を高めたり、非常勤講師の単位時間もそれに合わせて時間的余裕を持たせたりするなど、もう少し現場の日常的な困難に対応する形で資源の配分方法を工夫できないものか、と思います。
金子真理子
東京学芸大学准教授)
志水  やはり県教委、市教委の役割が大きい。現場がうまく回転する柔軟な対応を取れないはずはない。地域の教育行政の見識、スタンスが問われます

というか非常勤制度をなくすか今の十分の一にして正規教員としてみんな雇っちゃえよ。非常勤講師に対する依存度が高すぎる。

志水  今回、各県の聞き取り調査をしていて強く感じたのは、県教委や市教委と現場の関係が良好なところは、指導主事の訪問が実質的な意味をもって、教員の力量がアップしているのではないか、と。そういう地域では、かつてあった自主研修が形を変えて生き残っているのかもしれない。国の政策として今すぐ格差是正の方向に大きく傾く可能性は低くとも、分権化は一定程度進んでいるので、地域ごとの小さなユニットで取り組めるところはあるでしょう。

というわけで結局いい教育ってのはある程度時間な時間と権限が教員にある状態で、教員と子ども、教員と保護者、教員と教育委員会とのよい関係性が前提にあって、その中で知的な活動とか知的な活動をする場とかが必要だよってお話。
調査の方も読んでみてほしい。